しめ縄を家の軒先に飾り、福を招き入れ、悪いものをよせつけない。目に見えないものに対してのおもてなしの気持ちと警戒心は、現代で軽んじられがちになっている。だけれど今こそ、どちらももう一度みんなが大切にするべき時期なのではないだろうか。どの家もしめ縄をもう一回つけろ、というのは不可能であるし、押しつけもしたくない。そうではなくて、しめ縄に込められてきた気持ちを、心の中にいつももっていられるような日本であってほしい。
モノではなく精神
自己中心的でなく、清濁併せ呑(の)むかのような願いをしめ縄に込めていた時代があったわけで、そういった時代はどれだけ幸福だったのだろうか。しめ縄が家の軒先からだんだん姿を消していくとともに、物質的にはとても豊かになった。だけれどそれと同時に、精神が疲弊していったといわれる。しめ縄に込められた願いである招きたい“福”とは、物質ではなかったのかもしれない。