サスペンス映画の巨匠、アルフレド・ヒチコック監督。その「恐怖表現」に大きな影響を与えたとされるホロコーストを描いたドキュメンタリーが公開される=1968年撮影(AP)【拡大】
残虐場面に強い衝撃
不完全版の映像ではナチスを率いたアドルフ・ヒトラー(1889~1945年)に熱狂する大群衆とホロコーストの残虐な場面が対比的に描かれており、映像としての衝撃は大きい。ヒチコックは基になった映像を見て、1週間もスタジオに通えなくなるほどの衝撃を受けたという。
帝国戦争博物館のハギス上級学芸員は「他のどんなナチス収容所に関するドキュメンタリーよりもはるかにリアルだ。見れば憂鬱になり、打ちのめされるが、希望もある」と評価。試写を見た歴史や映画の専門家も「恐ろしさと素晴らしさが同時に襲ってきた」との感想を口にしたという。
インディペンデント紙は、この作品の製作で受けた衝撃が、ヒチコックのその後の映画における恐怖や暴力の表現に大きな影響を与えたと指摘した。ヒチコックは45年以降、効果的に観客の恐怖心を高める演出や映像手法で、「サイコ」(60年)や「鳥」(63年)といった傑作を次々に生み出している。