テロ拡散よりは…欧米誘導
ロシアがシリアのアサド政権に知恵をつけていると筆者は見ている。シリア反体制派の一部にアルカーイダなどのイスラム原理主義過激派とつながる分子がいることは事実だ。こういう分子を含む反体制派にサウジアラビアが資金や武器を提供しているのも事実だ。その部分をプリズムで拡大し、欧米諸国の危機感をあおり、「テロリズムが国際的に拡散するよりは、アサド独裁政権が続いて、シリアが安定していた方がいい」という方向に欧米を誘導するというのがロシアのシナリオだ。シリアはロシアの指南通りに動いている。ジャファリ大使のインタビューもこのようなロシアのプロパガンダ(宣伝)戦の一部だ。ロシアのもくろみは、恐らく成功する。それは、イスラエルがシリアが極度の混乱に陥らず、「スタートゥス・クオ(現状維持)」が続くことが、所与の条件下では最良のシナリオだと考えているからだ。この観点から、イスラエルとロシアは、さまざまなチャンネルを使って、シリア問題について両国の利害関係を調整していると思う。
対抗措置とらない米国
それにしても不思議なのは、米国のオバマ政権の動きだ。米国の中東専門家にもロシアの思惑は見えているはずだ。それなのに対抗措置を何もとっていない。このままではシリアはロシアの「保護国」になる。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)