世界的タップダンサー、熊谷和徳さんが1年間のNY留学を経て行った凱旋公演。タップと音楽の融合という革新的なパフォーマンスを見せてくれた=2014年1月18日、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホール(田中幸美撮影)【拡大】
目を閉じて聞いていたら、まるで打楽器を演奏しているように思える。次の瞬間、純白のスーツ姿がステージに浮かび上がった。背景にはニューヨーク(NY)の摩天楼の映像。世界的タップダンサー、熊谷和徳(かずのり)さん(36)が約1年に及ぶNY留学から帰国、このほど東京・渋谷で凱旋(がいせん)公演を行った。
白いタップシューズでときに激しく床を打ちつけてはビートを繰り出す。最初は無伴奏で足音だけが鳴り響き、そこにベースの低音が重なり、ドラムのバスドラが呼応する。さらにビブラフォンとギターがかぶさり、一つの音楽ができあがっていった。
熊谷さんの繰り出すタップは、映画などで知るフレッド・アステアのような従来のタップダンスとはまったく印象が異なる。ダンスというよりも音楽の一部で、しかも打楽器だ。
公演のタイトルは、「DANCE TO THE ONE」(たった一つの大切なことのために)。「大切なものはそんなにたくさんはない。今自分にとって本当に大切な一つのことはなんだろうと考えたときにひらめいた」タイトルだという。
NYでは「じゃあね」という代わりに「ONE」と言って電話を切ることがある。「ONE」には、一つになるとか、「ワンラブ」という意味があり、メッセージより観客と一つになりたいという思いを込めたと語る。