現代のジャズとは何か? その問いに一つの答えを出したのが、ジャズピアニストのロバート・グラスパーである。2013年にエリカ・バドゥ、レイラ・ハサウェイといったボーカリストをフィーチャリングしたアルバム、『BLACK RADIO』でグラミー賞を獲得する。しかし、カテゴリーはR&B部門であった。これは、最新のジャズと21世紀のソウルミュージックの親和性の高さを物語る事実であったと同時に、ジャズ批評が正統派を重要視していることの表れでもあった。そして、ジャズミュージシャンの可能性を示唆する事件でもあったのだ。実は、ロバートは、『BLACK RADIO』を個人名で制作していない。それはロバート・グラスパー・エクスペリメントというプロジェクトバンドでのリリースで、個人名を冠した通常のピアノトリオとの差別化を、彼が意識的に図っていたといえる。つまり、アーティストサイドからもオーセンティックなジャズの枠組みに収まらない実験を試みた自覚があったに違いない。