もちろん、DJたちはデリックの音楽をサポートしているし、決して対立することはないだろうが、プライドをかけてミュージシャンたちを触発し、さらなるジャズの進化を誘発するに違いない。選ぶものと選ばれるものの切磋琢磨により、より良いインスピレーションの循環が生まれることに期待したい。
現代のジャズを生で
とにかく、プレーヤーとしてDJを凌駕する柔軟な発想を持ち、ジャズそのものの進化に身をもって貢献しようとしているデリックには大きな注目が集まっていることに間違いはない。ベーシストという、ともすると主役を補佐する役目と思われがちなポジションでありながら、バンドを率いてリーダーとしていかなる存在感を発揮するのかを生で目にする日を日本のファンも待ちわびているはずだ。
ロバート・グラスパー・エクスペリメントとはどこがどう違うのか? また、彼が提示する現代のジャズとは何なのか?といったことがもうすぐ明らかになるのだ。いや、実験というエクスキューズを伴わない本人名義の公演で、ジャズをも一つの要素として取り入れた彼の音楽が一体何であるのかを、聴衆はついに目撃することになるだろう。