今回の朱氏をめぐる不可解な事件については、産経新聞が深い取材に基づいて積極的に報道していた。筆者は、この間の産経新聞の報道姿勢に敬意を表している。
朱氏は、論壇で中国政府の主張を過剰と思えるほどに主張した。10年9月の尖閣諸島の久場島領海において中国漁船が日本の海上保安庁巡視船に意図的に衝突した事件についても、朱氏は中国漁船は過って衝突したという主張を展開した。また、尖閣諸島の領有権係争について、棚上げにする日中合意を証明する記録が中国側にあると朱氏は、日本のマスメディアで積極的に説明していた。
朱氏の言説は、産経新聞の社論とは正面から対立する。朱氏が、中国で消息不明になった後、産経新聞は朱氏が中国のインテリジェンス機関である国家安全省によって拘束されているという情報をいち早く報じた。このことによって、多くの人々が、人道的観点から朱氏の状況について強い関心を持つようになった。たとえ立場が対立していても、公権力から不当な取り扱いを受けている学者に対して、人権を回復するという観点から産経新聞が独自取材に基づく報道を続けた。それだから、筆者は産経新聞が好きなのである。