どこか頼りない印象があったのは、いつのころまでだろう。つい最近までだったようにも思う。いまの村上佳菜子(19)には、そんな懸念は全く無用だ。
山田真知子コーチのかける声に、手は大丈夫かと心配になるほど強くリンクのフェンスを両手でたたき、力強いステップで氷上の中央に向かい、演技の開始を待つ。堂々たるジャンプ、確実なステップ、どれも申し分ない。エンディングにかけて観客席を盛り上げ、演技を終えればガッツポーズを繰り返す。各国のソチ代表の多くが参加を見送った四大陸選手権(台北)にあっては、貫禄さえにじみ出た。
ショートプログラム(SP)でもフリーでも1位の完全優勝。合計得点では自己ベストを更新してソチ五輪へ弾みをつけた。大会直前には右足首を痛めて出場をためらい、痛み止めを飲みながらの優勝でもあった。「滑りにちょっと重みが出てきたかな」と振り返り、「表彰台の一番上に乗って、本当に気持ちよかった」と屈託のない笑顔をみせた。
辛口の山田コーチも「大満足。自信につながる」と満点をつける完璧演技。ソチでは全日本優勝の鈴木明子(28)、絶対エースの浅田真央(23)と3姉妹の末娘の役どころだが、台北の表彰台では2位に入ったシニアデビューの15歳、宮原知子を抱きしめて迎え、選手団のお姉さん役も務めた。