第二次世界大戦中に連合国の捕虜を用いた「日の丸アワー」という謀略宣伝放送の責任者を務め、ラヂオ室の創設に関与した徳川15代将軍慶喜の孫でもある池田徳真(のりざね)氏(1904~93年)は、モスクワ放送をBBC(英国放送協会)国際放送の亜流だと規定した。池田氏によれば、BBCの特徴は、「小さく信用させて大きくだます」という謀略型だという。
確かに「「ロシアの声」」の日本語版サイトは、ロシアにとって都合がよい情報を巧みに取り上げるとともに、リスナーからの激しいロシア批判に関するコメントもあえて掲載している。このような手法で、日本の世論分析を行ったり、反露勢力の考えをつかんだりしているのだ。
この点からすると、現在のNHK国際放送は、北方領土問題で日本政府の立場を激しく非難する大学教授の見解などを放送しており、日露のインテリジェンス戦やプロパガンダ戦に役立っているとはいえない。NHK国際放送の内容を時代に合わせて変える必要があると筆者は考える。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)