少し知っている人がふらりと時間を過ごせば、それらの本の面白さや価値に気付くはず。ところが、毎日その本棚の風景を眺めている学生たちは、既視感からか図書館の奥まで踏みいっていく必然もモチベーションも抱きにくいようだ。
そもそも図書館という場所は、これまでアーカイブという機能を一番のプライオリティーにしているところが多かった。目の前を通り過ぎる人に「この本、面白いですよ」と投げかけるより、何年かのちに検索してやってくるかもしれない誰かに「ちゃんと保存しておきましたよ」と、滞りなく手渡せるように。けれど、検索型の世の中に移行して以来、本との身体的接触が持てるこのような場所では、知らない本に興味を持ち、出くわしてもらうことが重要になっている。だからこそ、学生たち自らが「この本、面白いですよ」と訴えかける場づくりをする、こんなワークショップに至ったわけだ。
丁寧に本を差し出す
図書館のエントランス階段を上ったところに、学生たちがつくった段ボール製の小さな本棚が建ちあがる。紙とはいえ、案外しっかりした造りだ。集まった学生たちは25人ほどで、デザイン科の者もいれば、油絵科の者もいる。彼らを3つの班に分け、自分たちの本棚のテーマを決めるところからスタートだ。