「もっと気持ちを出さないと勝てない。勝ちにこだわる部分が(接戦だった)前の2戦とは全然違った」と、主将の大沢は試合後、唇をかんだ。日本の枠内をとらえた30本のシュートは、ことごとく弾き出された。25本の枠内シュートで4点を決めたドイツは、コースの精度、速度など、シュートの質が高かった。「相手のFWは上手だった」。GK藤本那菜(なな、24)のつぶやきだ。
だが、気持ちを強く持ち、前を向かなくては、1勝はもぎ取れない。
環境変えた切符
開催国枠で出た1998年長野五輪は5戦全敗で計2得点、45失点。現代表で唯一、この惨敗を経験した近藤陽子(34)は「緊張で何もできなかった」と悔し泣きした屈辱を忘れない。それ以降の3大会はいずれも最終予選の土壇場で萎縮し、あと一歩で涙をのんだ。アルバイトで生計を立てる競技環境への不安に「先が見えない」と多くの仲間が離れた。
女子アイスホッケーのソチ五輪出場権は、世界ランク上位5国と開催国ロシアに無条件で与えられ、残り2枠の一つをスマイルジャパンは過酷な予選を勝ち抜いて自力で得たのだ。1年前の最終予選で、選手たちは「勝てば環境が変わる」を合言葉にリンクで輝きを放ち、五輪切符をつかんだ。