吉野山は、聖と俗、中央と外縁の境界線であり続けてきた。そして境界線だからこそ、人は避けるのではなく、通り過ぎ、しばし身を委ねてきた。そこでは人や文化が出会い、多くのものが生み出される。境界線は何かを断ち切るものではなく、交差し合い、文化を育む豊かな場であることを、吉野山は教えてくれた。
日本の魅力とは、この小さな列島に、海や大陸の文化が流入し、それが土着の文化と融合し、新しい文化を再生産し続けている点ではないだろうか。そのことと吉野山が重なって見える。そんなことを考えつつ、山上の金峯山寺で、刻々と変わる空をぼんやり眺めた。雨が降ると霧が沸き上がり、それが晴れたら、美しい夕陽が顔をのぞかせた。(俳優・クリエイター 井浦新、写真も/SANKEI EXPRESS)