「出会う力を大切に」
音楽との出会いは、小学生。最初に自分で買ったレコードは「走れコウタロー」(ソルティー・シュガー)、両親が買ってくれたのは「赤い風船」(浅田美代子)だった。やがて、岩手県出身の地元のフォークグループ、NSPに夢中になる。
「『ぼくの夏休み』という歌の中に“マークツー”という歌詞があって、よしだたくろうさんにつながり、その中の“さよならが言えないで どこまでも歩いたね”という歌詞にガツンときて、そして、はっぴいえんどを知り…」
熱い語りが続く。その後強く影響を受けた音楽家は、天野滋さん、忌野清志郎さん、大瀧詠一さん…今は亡き人たち。多くの薫陶は、きくちさんの心の中に生きている。
「番組を作る上でも出会う力は大切にしている。出会うべき人には出会っていると思う」。それが、未知のアーティストを発掘する「見抜く力」として、名物プロデューサーといわれるゆえんだろう。
「新聞社に入りたかった」というほどの活字人間。「本来ならiPodだろう」とからかわれるほど、電車の中では常に本を読んでいる。ちなみに、人生訓は「棚からぼたもち」とか。自由な発想、豊かな想像力…天才的な“音楽の職人”が、そこにいた。(文:松本明子/撮影:野村成次/SANKEI EXPRESS)