「最初はそのまま久住さんを描こうかと思っていたんですが、なかなかうまくいかなくて。ある時、野武士というキーワードから、一線を退いた定年退職者、というイメージが浮かびました。実際、僕の同級生も8割が定年退職している。まじめに勤め上げてきて、これからの人生何をしようか…。不安もあるけれど、同時に開放感もすごくある。ふらりと民宿に泊まって、思う存分朝寝坊できる…みたいなね。そのあたりの感情を、リアルに描きました」
久住さんも、「最初はどうなるんだろう、って思ってたんです。土山さんの作品といえば、口をぐわっと開けてわしわし食べる様子が大きいコマでバーンと描かれているイメージ。『野武士~』はそんなシーンないしな…なんて(笑)。でも、香住のラフ画を受け取ったときに、『ああ、この人の話になるんだ』ってすごくしっくりきた」と、新たな物語が動き出した瞬間を振り返る。
自身もマンガ家として活動する久住さん。土山さんの解釈について「プロフェッショナル」と絶賛する。「絵にすべきところをビシッと切り取っている。たとえば、大衆酒場で常連客が『雨漏りがひどくて店の中で傘をさして飲んだ』と回想するシーンがあるんです。文字では伝わりづらいけれど、絵にすることによって、すごく面白いシーンになっている」