【本の話をしよう】
自分の本棚をしげしげと眺めてみると、あらためて「ああ自分はこういう本を好んで読んできたんだなあ」と思わされます。私の本棚には、まあ当然のことですが、難しい専門書や哲学書はほとんど見当たりません。ジャンルごとに整然と並んでいる、というわけでもなく、唐突に漫画があったりします。しかも続きものの途中の1巻だけとか。最下段で一番場所を取っているのは広辞苑ですが、今、その役目は、電子辞書内蔵のほうにとって代わられています。ううむ、こうして紙の本は居場所を失くしてゆくのか…。
それでもそれなりに傾向というものはあり、私の場合、小説では短編集が多く並んでいます。長編ならではの壮大なスケール、世界観、重厚な読み応えもたまりませんが、短編が持ち得る爽快で見事な切れ味、それがうまく決まった作品のインパクトは、長編に勝るとも劣らぬものがあります。短いがゆえに、その後を考えさせる余韻を漂わせる作品もあります。そして、もっとぶっちゃけて言えば「短いから、一冊分でいくつも作品が読める」というのも大きな魅力ではないでしょうか。ちょっと貧乏くさいですが。あと、「長いと途中で飽きてしまう」という私の母のような人にも、合っているでしょう。