気に入りの作品にめぐり合うと、誰かにそれを語りたくなりませんか? 私にとって『女も虎も』がその一つなわけですが、この、「オチを言いたいんだけれど、自分の言葉でつまらなくするのはもったいない、それよりまっさらな状態で読んで、楽しんでほしい」という、とにかく勧めて読んでもらって読後感を共有したくなる感覚。これは、読書に伴うとても幸せな瞬間だと思います。
冴え、驚き、余韻…
ちなみに母は、山崎洋子さんの『ねずみ』が一番ざわざわして良かったとのこと。気持ち悪さとラストの怖さと痛快さが見事で、もちろん私も面白く読みました。ねずみは好き嫌いが多いに分かれる動物で、おそらく母のように「どうしたってねずみは生理的に駄目」という方にとっては、この作品は短くとも超一線級のホラー作品と言えるでしょう。痛快と先に書きましたが、ラストシーンの光景をリアルに想像すると、本当に総毛立ち、叫びだしたくなります。