内容は言うまでもありません。様々な色合いの作品が、様々な切り口で読み手を楽しませてくれます。これも帯の文章ですが『一読五分 30本勝負 閃光放つ人生の断面』とあります。本当に一作品の分量は短いです。確かに5分程度で読み終わるでしょう。でも、そのたった5分で読者は驚き、唸り、脱帽させられる。5分で、です。短編小説のすごさというものを、どうだとばかりに突きつけられる感じがします。
読後感を共有したい
それぞれに印象深く、語りたい作品ばかりなのですが、とりわけ私が好きなのは東野圭吾さんの『女も虎も』という作品です。この一風変わったタイトルは、「お題拝借ミステリショートショート競作」という企画において、同じくこの作品集に『生きている山田』(このタイトルもイイ!)が収録されている大田忠司さんが出されたもの。読んだ当時の私は、小説を書いたこともなく、面白く読む一方で、「いきなりこんな題名を提示されて、よくそれを生かした見事な作品が書けるなあ」と、作家の発想力にいたく驚いたものでした。じゃあ、一応、なんとなく作家の末端にかろうじて立っている今現在はどうかというと……驚きは色あせることなく、一読者としてやっぱり感服してしまいます。