ゆっくりと周囲に溶け込む
福岡耕造が以前つくったリリー・フランキーとの共著『ビートルズへの旅』(4)でも示されているように、彼は徹底的に足でかせぐ写真家だ。だから、今回も福岡は渡名喜島に通いつめた。美容室に集まる島のお客さんだけでなく、その島の景色やユンタク(おしゃべり)の風景、無邪気に遊ぶ子供たちなど、あらゆる島の被写体に少しずつ近づいてゆく。そして、その撮影プロセスは、まるで福田さんがこの島に美容室をつくり、ゆっくりと周囲に溶け込んでいった過程と重なる。
6年前に福田さんが渡名喜島に通いはじめたとき、何かの地縁があったわけでは決してない。たまたま乗り合わせたフェリーで知り合った小学生に、「うちの島には美容室がないから、何日も掛けて船に乗り那覇の美容室までいくのだ」という話を聞いたことが、きっかけといえばきっかけらしい。それでは、と勢いあまって美容室をこしらえたものの、「やまとんちゅ(本州の人)」の彼のところへいきなりたくさんのお客さんが来るはずもない。言葉も分からず、孤独感を抱く島滞在。そんな時、彼の周りに集まってきたのは、島の子供たちだったという。