露に自滅リスク
強制排除によって混乱が流血の事態に発展したことで、「ロシア系住民の保護」を名目にロシア軍がウクライナ東部に侵攻する可能性も指摘されている。ロシア政府は部隊が国境付近に集まっていることは認め、「あくまで通常の軍事行動」としているが、少なくとも圧力をかける意図があることは明白だ。
ただ、プーチン氏にとって、東部への軍事介入は多大なリスクを伴う。ロシア系住民が6割を占め、行政、議会、住民がほぼ一体となってロシア編入を求めたクリミアとは異なり、東部ではロシア語使用者が多数派ではあっても、民族としてのロシア系は少数派だ。庁舎の占拠を続ける武装勢力も、住民の大々的な後ろ盾を得ているわけではなく、プーチン氏が安易に東部侵攻に踏み切れば住民自身の反発を招きかねない。
さらに、侵攻すれば米国と欧州連合(EU)から追加経済制裁を受けるのは必至だ。クリミア併合の際は、一部の個人や企業への制裁にとどまったが、本格的に侵攻すれば、制裁は一段と厳しいものになる。プーチン氏は妥協のそぶりをみせていないが、ロシアと世界経済のつながりが深まる中、今後の展望があるわけでもなく、制裁によるロシア経済の落ち込みは政権基盤を危うくする。対応を誤れば、自滅の道が待っている。(SANKEI EXPRESS)