「奇跡ですね」。私は思わずそう言ってしまい「しまった!」と後悔。奇跡ではない。彼が自分の意思でそうしたのだ。
「人間はすごいんです。僕が証明です」
車椅子から立ち上がれるようになるまでのリハビリも壮絶だったことだろう。自暴自棄になり泣き暮らした日々もあったというが、その不屈の精神で、もうひとつの夢だったカメラマンになることもかなえた。
松葉づえやそのあたりにあるものを駆使してカメラを構える姿は、アクロバットのようでクールだ。不思議な角度から撮られた写真はおもしろい。元気さんは「自分の存在を知ってもらうことで、人に希望を与えたい」と話す。かつての自分が「あきらめないこと」の大切さを本やテレビで知った人たちから教えられたように。
これからもこの紙面を輝かせてくれるのを楽しみにしている。(一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづるさん/撮影:写真家 山下元気/SANKEI EXPRESS)