35年の経験を持つ潜水士(58)は(4月)22日、速い潮流と約30分間格闘した末、船内に入った。乗客用通路でジーンズに救命胴衣を着た男子生徒の遺体を発見。遺体を船外へ出そうと押した時、重みを感じた。1メートルほどの胴衣のひもが下に伸びている。たぐった先には結び目があり、はだしの女子生徒が身に着けた胴衣につながっていた。
「どれほど恐ろしかっただろう。一緒に恐怖に耐えて生き残ろうと、互いのひもを結んだのだろう」と潜水士。
潜水時間が10分しか残っておらず、2人の遺体を一度に引き出せないと思い、男子生徒から先に引き揚げようとひもを解いたが、遺体が浮かび上がらない。
「この子たちは離れるのが嫌なのか」との思いに涙が出て力が入らなくなり、2人を残し水面へ上がった。「これまでで一番胸が締め付けられた」と潜水士は語った。
2人を引き揚げるために助けを求めた後輩たちも、作業をしながら涙を流したという。潜水士は取材に対して「どうか安らかに」と2人の生徒の冥福を祈った。(共同/SANKEI EXPRESS)