午後8時、夕焼けで赤く染まった空を覆うようにオーロラがうっすらと現れてきた。「これは絶対に撮れるぞ」
薄い氷が張った湖の上を慎重に進み、カメラをセットした。すると、地球の先端から地上までが1本のラインで結ばれ、そこにあたかもオーロラのカーテンが降りてきたような光景が広がった。誰もいない氷原で思わず「うわー」っと絶叫した。
カナダ・イエローナイフ。オーロラ撮影の聖地とされる場所だ。私は今年初めて4月に訪れ、春のオーロラの撮影に成功した。
春のオーロラは4月の半ばごろから約1カ月くらい撮影が可能だ。それ以降は夜がなくなり白夜の季節となってしまうので、オーロラ自体の撮影が不可能となる。冬には午後5時くらいにあたりは暗くなってしまうが、春は日没時間が深夜0時くらいと遅いため、夕焼けが残った空にオーロラが出現する可能性が高くなり、残雪と絡めたこれまでにない写真が撮影できる絶好のチャンスとなるのだ。
今回の撮影では、西の空に夕焼けが広がり、月が上った東の空は焼けたように赤く染まり、頭上を覆うように降り立ったオーロラが残雪を照らし出すという滅多に目にすることのない幻想的な光景を収めることができた。これは満月後の2日間くらいしかチャンスがない。私は6日間に及ぶ撮影の中で全ての日においてオーロラを撮影できるという幸運にも恵まれた。