クイーン・エリザベス・オリンピックパークから西へわずか600メートル。後方にメーンスタジアムとオービットタワーを望むハックニー・ウィックの町並みは五輪の前後でほとんど変化が見られない=2014年3月3日、英国・首都ロンドン(渡守麻衣さん撮影)【拡大】
ロンドン・オリンピック・パラリンピック組織委員会はメーン会場をここイーストロンドンに据え、集中的な公共投資による再開発と同時に、風力発電やバイオマスなどの再生可能エネルギーの利用や二酸化炭素排出量削減など、コンパクトな環境配慮型五輪を目指した。しかしその一方で、費用は当初試算の3倍以上となる87億ポンド(約1兆1000億円)にかさみ、会場北側のカニングタウンなどの一部地域では過剰投資による家賃の高騰が起きるなど、負の側面も残された。
近くに住む清掃員のオティオ・アベブレーズさん(37)は「期間中は世界中から人が来て華やかで楽しかったけど、チケットは高すぎて買えなかった。確かに雇用は増えたが、工事関係の一時的なものがほとんど。87億ポンドが無駄だったとは思わないが、このあたりの生活は五輪前も後もほとんど変わらない」と話す。
≪「祭りの後」 どうなる東京の風景≫
半径8キロ以内に大半の競技会場を集めたコンパクトさ、既存施設利用や閉幕後に撤去可能な仮設会場の利用など、特に環境面ではロンドンの経験が多数盛り込まれた東京五輪計画。そうした一方で、周辺地域の不動産価格がさらに高騰したり、五輪施設の建設を優先することによって東日本大震災の被災地の復興整備に支障をきたすことを懸念する声も上がっている。五輪後の長期的な都市計画や社会的な影響がどの程度考慮されているのかは不透明なままだ。