キノコの形をした岩が最も多く残るパシャバーでは、眼前に高さ数メートルの岩がいくつも迫る。奇岩の生い立ちは、噴火によって火山灰と溶岩が積み重なり、何万年、何百万年と経るうちに、雨水などによって地層が浸食されてできた。浸食されやすい地質の火山灰が先に細り、三角の形をした溶岩(玄武岩や凝灰岩)をてっぺんに載せているのがキノコそっくりというわけだ。しかし、火山灰が細りすぎた場合、支えきれなくなったキノコの“傘”は落下し、単なる三角岩と化してしまっている。
「パシャバーには後500年もすれば三角岩になってしまうキノコ岩や、これから1000年後にキノコ岩になる候補の岩などが混在しています」(日本語ガイドのオメル・サイマズさん)。実際、地震でも起きれば今にも傘が落ちてきそうなキノコ岩の周辺にロープが張られ、「近づくな、危険」の注意書きも。近くの小高い山に登りキノコ岩の群れを見下ろすと、大自然が刻んだ“彫刻の森”に、不思議な感慨を覚えずにはいられない。