始めは腹部にちょっとした赤い発疹ができただけだった。幼いころからアトピー性皮膚炎に悩んだ私は、アトピーが治った今も皮膚の小さなトラブルは日常茶飯事である。発疹のひとつやふたつで動じないが、数日後、発疹が全身に広がり始めさすがにあせった。
腹部を中心に、発疹はどんどん拡大していく。背中や太もも、上腕にも回り、身体も何だか熱っぽい(体温計は38度を指していた)。そして、かゆい。特に夜がつらい。「全身」「発疹」「かゆい」などのキーワードでインターネットを検索すると、「帯状疱疹(ほうしん)」「梅毒」「猫ひっかき病」などの病名が次々に出てくる。
どれも当てはまらない気がするが、病気のサイトばかり見ていると恐怖心が増す。数日の辛抱だろうと高をくくっていた発疹がついに前腕に回ったところで、病院嫌いの私もついに職場近くの皮膚科に駆け込んだのだった。
腹部や背中を観察した女医さんは、机の上から分厚い医学書を出してくる。開いたページには、私と同じ全身の真っ赤な発疹の写真。まさか変な病気なのでは。いや、発疹が広がり続けるなど、十分変だ。それよりちゃんと治るのか。胸が高鳴る。ゆっくりと口を開いた先生が告げた。