本作は堂珍が主役として初舞台を踏んだ音楽劇を映画化したもので、優児に愛着もあるし、役作り自体に大きな戸惑いはなかった。亜紀の死を認められず、どんどん自分を追い込んでいき、果ては現実と非現実の境目が分からなくなって、暴れたり、夢遊病者同然となってしまう優児の姿に、堂珍は「感情にメリハリがあって演じるうえではおもしろかったですよ」と満足そうだ。
役者になろうという気持ちはまったくなかった。ケミストリーとして活動中の11年、辻が手がける舞台に出演したことで、「外側から自分の本業である音楽を見てみたいと感じるようになった」という。音楽、脚本、作家、監督…とあらゆる立ち位置から物事を眺められる辻と言葉を交わすうちに、表現者として素敵な人だとの思いを強めていった。「辻さんの音楽は『きれいな世界観』といったイメージがあり、自分の好きな感性でもあるんです。そんな感性に包まれた世界で演じられるのだとしたら、演技をやってみる価値もあるのかな。辻さんとの出会いは偶然でしたが、人生の大事なターニングポイントとなりました」