合同焼香所で、セウォル号沈没事故の犠牲者遺族に詰め寄られる韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(右端)。北朝鮮は事故対応で朴政権を糾弾する世論が韓国で強まると、その尻馬に乗って非難のトーンを上げ始めた=2014年4月29日、韓国・首都ソウル郊外の安山(聯合=共同)【拡大】
オバマ氏に対しては、朝鮮中央通信が今月(5月)2日、労働者の寄稿として「アフリカの原生林に生息するサル顔そのものだ。オバマこそ、われわれに発言する資格もない人間失敗作だ」と人種差別的表現を使って攻撃した。
米国務省のマリー・ハーフ副報道官が「最低だ。常軌を逸している」と不快感をあらわにするなど、米側が激しく反発すると、北朝鮮外務省は「彼(オバマ氏)が南朝鮮に入り込んでわれわれを中傷したことへの当然の対応だ」と言いつくろおうとした。
世論扇動には逆効果
韓国の国民感情を逆なでするだけの北朝鮮の一連の非難に、韓国紙、中央日報(電子版)は(5月)14日、「北朝鮮はセウォル号に口を閉ざせ」と題したコラムで「北朝鮮ができることは、犠牲になった高校生を愚弄して政権打倒を扇動することだけか」と疑問を呈した。犠牲者の親同様、2人の娘を持つとされ、「父親である金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が出てきて(非難宣伝に)『動作、やめ』と叫ばなければならない」と強調した。
北朝鮮が4回目の核実験を繰り返し示唆しながら強行しないのは、韓国社会がセウォル号事故に揺れる中、実施に踏み切った場合の国際世論の反発が読み切れないためとの分析もある。正恩政権にとって海岸での砲撃訓練などを除き、口での非難宣伝しか米韓への示威手段がないのも実情だ。ただ、北朝鮮が狙う世論扇動には逆効果でしかないこともまた、確かなようだ。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)