昔懐かしいパンを今なお味わえることができるのは、神戸市東灘区の「フロイン堂」も同じだ。こちらは80年前の製法をそのまま引き継いでいる。「船」と呼ばれるこね桶の中、手作業で生地をこねる。焼くのは昔ながらのレンガ窯。重労働だが、おいしさに直結する理由がある。「手ごねだから、生地の粘りを手で感じることができる。直火ではなくレンガを通じて熱を与えることで、高温を維持できふっくらと焼き上がる。次世代に伝承すべき技術がここにある。まさに『パンの文化遺産』です」
自家培養の麹や酵母
未来のパン店のあり方に果敢にチャレンジする店も。岡山県真庭市の「タルマーリー」だ。ここでは、あんパンなどに使われる酒種のもととなる麹(こうじ)を、自家培養している。麹は培養が難しいため、麹店から購入するのが普通。しかし、ここでは自然栽培(肥料も農薬も使わない栽培法)のコメを使うことで麹づくりを成功させた。現在は麹だけでなく、ビール酵母も自家培養している「発酵の専門家」でもあるのだ。「自然の循環の中でパンを作る。添加物を使わない食生活と、地域で食の全てをまかなう循環型社会にもつながります」