私が初めて買った(携帯電話の中でお気に入りのキャラクターを購入するのだ)スタンプは、トムとジェリーだった。
その存在を知ってからも、ずいぶん長いこと抵抗していたから、頭では“誘惑されるものか”と戦っていたにもかかわらず、ある日するんと見知らぬ誰かが自分の部屋に住みついてたかのように、私はスタンプを受け入れてしまっていた。
こういう時、“水際で堪えられるかどうかがすべて”というのは本当だった。トムとジェリーを購入してしまったあと、抵抗感はぐっと薄らぎ、ここで自分が踏ん張ることに一体どういう意味があるのだろうという気持ちになっていくのだ。キャラクターは無限に思える数の中から選べるし、その中のどれかが自分の気持ちを過不足なく伝えてくれるし、何より言葉をあてはめるというひと手間が省けるおかげで、人を待たせないで済む。
私はみるみる堕落し、トムとジェリーに頼り始めた。うれしい時には彼らが飛び跳ねるスタンプがあり、ショックならば彼らが凍り付いたスタンプがあり、やりとりがとてもスピーディーになり、なんだか自分も社会のめまぐるしい変化についていけてるのではないか、と自信も湧き始めた。