さらに合意文書では日本、北朝鮮が行うべきことについて、それぞれ7項目を箇条書きにしている。北朝鮮側の取る措置で興味深いのは、<第3に、全ての対象に対する調査を具体的かつ真摯に進めるために、特別の権限(全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限)が付与された特別調査委員会を立ち上げることとした>という合意だ。
北朝鮮は、金正日総書記の時代に「拉致問題は解決済み」という立場を表明した。軍の特殊工作部隊やインテリジェンス機関を含むすべての機関を調査する権限を持っているのは現在、金正恩第1書記しかいない。要するに正恩氏の政治主導のもとで拉致問題の解決を北朝鮮は文書で合意したのである。
この背景には、北朝鮮のイデオロギー転換があると筆者は見ている。昨年(2013年)、平壌の外国文出版社から発刊された正恩氏の論集『最後の勝利をめざして』にこんな記述がある。
<限りなく謙虚な金正日同志は、金正日主義はいくら掘り下げても金日成主義以外のなにものではないとして、わが党の指導思想を自身の尊名と結びつけることを厳しく差し止めました。