今日、わが党と朝鮮革命は金日成・金正日主義を永遠なる指導思想として堅持していくことを求めています>(8ページ)
金正日総書記は「金正日主義という呼称は用いるな」と厳命しているにもかかわらず、正恩氏は、それを無視して金日成・金正日主義を朝鮮労働党と北朝鮮国家の指導思想としている。要するに、正恩氏は、遺訓政治の枠を超えた、新たな判断をしているのだ。
この原則は、拉致問題にも適用可能だ。父の金正日総書記が「あの問題は終わった」と言っても、正恩氏はその遺訓にとらわれないフリーハンドを持っている。日本側はこのような北朝鮮のイデオロギー的変化を踏まえた上で、巧みな交渉を行ったのである。国際関係で「合意は拘束する」というのが大原則だ。もっとも北朝鮮の場合、「約束はしたけれども、約束を守るという約束はしていなかった」と主張をすることがある。このような独自の主張をさせないように外交交渉を行うことがわが政府の課題だ。そのためには、北朝鮮をめぐる国際環境の変化を正確におさえておく必要があるので、この点については次回論じる。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)