学生時代に旅行したイタリア北部の街では、市民が仕事を終えた夜にクラシックのコンサートに出かけ、終わると空気のいい高原の小屋に集って酒を酌み交わし、余韻を楽しんでいた。とても華やかで、さざめいていた。「日本にはない光景だ」と面食らったことを覚えている。
日本でも私が知らないだけで、その光景があった。
最近、労働時間の規制を外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」が話題になっている。「短時間に成果を出す人よりだらだら長時間残業している人の方が賃金が高いのはおかしいので是正する」という趣旨もあるというが、一般会社員には「残業代がゼロになるかも」という危惧が強いようだ。
これを口実に賃下げの方向に進んでは非常に困るが、メリハリをつけた働き方は推奨されてもいい。
昼間は仕事をバリバリこなして、夜は芸術を楽しむ…。毎日とはいわないが、たまにはそんな時間を持つゆとりは人を豊かにしてくれると信じたい。(小川記代子/SANKEI EXPRESS)