大阪・道頓堀のシンボルとして親しまれている江崎グリコの電光看板が今秋、16年ぶりに交代する。現在の5代目は、両手を挙げたポーズのランナーが大阪市内の大阪城(中央区)や通天閣(浪速区)など名所を背景に走っている。6代目はランナーが駆ける構図はそのままだが、具体的なデザインは「ふたを開けてからのお楽しみ」(グリコ)。背景に描かれる大阪の新名所は-。臆測も飛び交いながら関西人の熱い視線が注がれている。
5代目看板は1998年に設置され、高さ約20メートル、幅約11メートル。その“キャンバス”には大阪城や通天閣、海遊館(港区)など大阪を代表する名所を背景に、笑顔で両手を挙げたランナーが陸上競技場のトラックを走る様子が描かれている。
夜になると青や赤など7色のネオンが点灯し、周囲を鮮やかに照らす。使われているネオン管は全部で約4460本。長さにすると延べ約5100メートルにも上るという。だが、設置から15年以上が経過してすでに老朽化。ネオン管も時代の変遷により「入手困難になった」(グリコの担当者)こともあって6代目にバトンを渡すことが決まった。
6代目は発光ダイオード(LED)照明に切り替える。省エネにも貢献し、ネオン管よりも鮮やかな演出にできるという。
グリコの電光看板が道頓堀に姿を現したのは、戦前の1935年。高さ33メートルを誇るネオン塔で、ランナーとグリコの文字を6色に変化させた。「当時としては型破りのネオンで、一躍大阪・ミナミの名物となった」(担当者)という。
ただ第二次世界大戦中の43年、ネオン塔は鉄材供出のため撤去。戦後の55年に2代目が再建された。高さ約22メートルの塔の下部には特設ステージがあり、大きなワニの人形がピアノを弾いたり、人形劇が演じられたりする演出もあった。
63年には噴水のある3代目に交代。噴き出す水を12色のランプ400個が照らし、虹の模様を描いたという。72年には現在の形に近いタイプがお目見え。大きなランナーが道頓堀川の水面に映え、「看板を背景に記念撮影するほどの名物になった」(担当者)。
4代目は隣接するビルの改装で96年に撤去され、98年に5代目が登場。大阪市民が親しみ、景観的にも優れた建物として2003年に大阪市指定景観形成物に指定されるほど、大阪の名所として定着した。
5代目は8月17日まで点灯し、その後は幕をかけて改装工事に入る。10月ごろに6代目をお披露目する。担当者によると「四角い看板で、ランナーを配するという基本構造は5代目と変わらない」という。だが、詳細については「フレッシュさのある感じでしょうか…」と言葉を濁す。
大阪市では13年4月にJR大阪駅北側で複合ビル群「グランフロント大阪」(北区)が、今年3月には日本一の高層ビル「あべのハルカス」(阿倍野区)が開業しており、こうした新名所も背景に加わるのではとの声も上がる。6代目の“就任”に今から関西人の期待と注目が集まっている。