【和のスタイル】
作家の宇野千代さんのエピソードで素敵なお話があります。波瀾(はらん)万丈な人生の彼女は、会社が倒産してしまい大好きな着物もほとんど手放してしまった頃、お葬式で浴衣を着ていったそうです。浴衣は洋服でいうとTシャツのようにカジュアルなもの。窮困の中とはいえ最低限の洋服などあったと思うのですが、なぜあえて浴衣を選んだのかは分かりません。もしかすると手元に残す衣類を考えたときに、お葬式のことも頭にいれて取っておいたものがその浴衣だったのかもしれません。浴衣は着物の中では一番格が下になるけれども、確かに場にふさわしい気がしてきました。想像してみてください。例えば、深い藍染の浴衣をきちんと着て足袋を履いた姿は派手でも地味でもなく、お別れの場に相応わしい凛とした空気をかもしだすと思うのです。千代さんの事情と彼女の立場があってからこそ成り立つものですので、お葬式で浴衣がOKだと安易に思わないでくださいね。彼女のそういったスタイルを立派だと思って、自分なりの浴衣に対する思いを見直すことにしてみました。