「新しい母を受け入れようとする過程で、兄弟は死んだ母には求められなかったものを新しい母に求め始めます。それがちょっとした性的な欲求だったり、恋愛的な感情と形が似ている」。ともすれば近親相姦的な際どさを感じるが「全く違う」ときっぱり。「例えば、エロ本が見つかると怒るのが前の母なら、新しい母にはその歯止めが必要なくなった状態」だという。
ベタな感情あえて淡々と
息子の甘えを全容し、「けなげでどこかもの悲しい、そんな女性」という新しい母親の造形は、そのまま三浦の母性像といえる。女性から見れば、母の実像からやや美化されている印象もあるが、「多くの男性の母親に対する思いはこんなもんかな、と思います。息子は誰しもマザコンの部分がありますから」。
裏風俗に集う男女を描いた「愛の渦」(2005年)など、人が隠したがる本性をむき出しにした舞台を見せてきた三浦だが、「人間のちょっとした情けないところ、人に見られたくないところをほじくり出して、それで人を引きつけるというような露悪的作風はあふれ過ぎて、飽き飽きした」という。