「楽譜と同様、演技にはあらかたせりふがあります。耳と心をオープンにして取り組むと、せりふは同じなのに、撮影ごとに、まるで違ったせりふに聞こえてくるんです。実際、ジャレッド・ハリスが私に返したせりふは、何度同じシーンを撮影しても、微妙に違ったものとなっていました」
作中、パガニーニの原曲をどう料理しようとしたのだろう。「僕は彼が残したバイオリンのパートに何も手を付けませんでした。100%オリジナルなものこそが完璧なものだと考えたからです」。ギャレットが変えたのは編曲だ。「完璧なバイオリンパートに見合うぐらい素晴らしいものを再現したかった。もちろん当時の楽器も活用してね」。歴史をひもとくと、パガニーニは出費を抑えるために常に最高の編曲をしていたわけではなかったことも見て取れた。ギャレットは「パガニーニに潤沢な金があったら、こんな編曲をしただろうということを考えながら、音楽の仕事にあたりました」と振り返った。