私の出身地である奈良県の南部に位置する吉野。この地は修験道の聖地として人々の信仰を集め続け、世界遺産にも登録された。金峯山寺のある吉野山を中心とした信仰と山の恵みを大切にする生活文化が根付いている。「RE-DESIGN ニッポン」の第3回は、そんな山の恵みから生まれる伝統的なものづくりの一つ、「和紙」を取り上げたい。
妥協しない古来の製法
吉野の国栖(くず)地方は古事記にもその名が出てくるほど由緒ある土地で、現在は手漉き和紙の里としても知られる。その手漉き和紙の伝統を受け継ぐ工房の一つが福西和紙本舗。屋号は「福寅」である。さまざまな種類の和紙を製造しているが、最も知られているのが「大和宇陀紙」だ。古来の製法で生み出される和紙の一種で、日本の文化財の修復紙や掛け軸の総裏打ち紙、さらにヨーロッパの文化財の修復にも用いられている。
数百年から1000年にわたって受け継がれてきた文化財の修復に使われる紙なので、5代目の福西弘行さん(選定保存技術保持者)、6代目の福西正行さんは「1000年持つ和紙を作る」ための妥協しないモノづくりを行っている。