京都を代表する文化産業の一つ、西陣織。その製造工程は20を超え、各工程は専門の職人によって分業されている。そうした工程のなかには、一般にはあまり知られていないが、重要な役割を果たしている素材がある。その中の一つが「箔」と呼ばれる素材だ。「RE-DESIGN ニッポン」の第2回は、有名な西陣織を支える無名の素材「箔」を取り上げたい。
先人たちの知恵
弊社のショールーム兼オフィスがある地区は西陣にほど近く、昔から織機の音が響き続けている。この記事を執筆中の今も、隣からは「ガシャコン ガシャコン」と心地よいリズムを織機が奏でている。
西陣織では豪華な意匠を施すために、金や銀を織り込んでいく。しかし、金箔や銀箔は薄く、本来であればとても織機の力に耐えられない。そこで弱い素材である箔を織り込んでいくために、先人たちは知恵を絞った。
まず、楮(こうぞ)を漉(す)いた和紙に漆を塗る。そしてその上から箔を貼っていく。それを糸状に裁断することで、織りに耐えうる素材としていくのである。これは「引箔」と呼ばれる。場合によっては、色合いや柄を多彩にするために、硫黄を染み込ませたアイロンを用いて化学反応させていく。