包囲網着実に
「今日の決定は不可避だった」。7月29日、ブリュッセルで欧州連合(EU)の大使級会合が制裁に合意した後、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(60)が発表した声明は撃墜事件で一変した欧州の雰囲気を表した。
欧州はロシアと経済関係が密接で、ドイツ企業の多数がロシアへ進出。経済制裁は避けたいのがメルケル氏の本音だった。フランスも伝統的に対露関係を重視する。ロシアに警戒心が強い旧共産圏の東欧、バルト諸国は英国と共に早くから強硬論を唱えていたが、全28加盟国による経済制裁の合意は困難とみられていた。だが、今月(7月)17日のマレーシア機の悲劇が「世界を変えた」(ハモンド英外相)。
日本は北方領土交渉を抱え、ロシアを刺激したくない立場だが、撃墜事件に絡む追加制裁を28日に発表。ジョン・ケリー米国務長官(70)から岸田文雄外相(57)に電話で謝意が伝えられた一方、ロシア外務省は「非友好的で近視眼的な措置」と日本を非難する声明を出した。カナダでは29日、スティーブン・ハーパー首相(55)が制裁強化の方針を表明した。