中南米の伝統的な親日国を歴訪中の安倍晋三首相(59)は、経済協力を深めて成長市場を取り込み、各国との連携を通じて中南米地域や国際社会での日本の影響力拡大も狙う。ただ、中南米では中国も進出に積極的だ。米国の「裏庭」で繰り広げる日中の勢力争いは“オセロゲーム”のように激しさを増している。
「アジアを含む一部の国では、力や抑圧による一方的な現状変更の試みがある。法の支配の考え方を国際社会に浸透させたい」
首相は7月28日の日カリブ共同体(カリコム)首脳会合で、中国の海洋進出を念頭にくぎを刺した。
首相は最後の訪問国のブラジルをはじめ各国で、中国が東シナ海や南シナ海で「力」によって問題を引き起こしていることを念頭に、国際法の順守や「積極的平和主義」を打ち出す日本への賛同を求めた。
「日本の対中南米政策は、歴史的な友好協力関係に基づく独自の絆を共にしている」
首相は7月31日の日チリ首脳会談でこうも訴えた。歴史的な結び付きを強調し、日本の最先端技術を基に積極的に日本の売り込みを展開。同行筋は「首相の外遊全てが中国を意識しているわけではないが、対中という意味で今回の歴訪の手応えは十分だ」と話す。