巨大なくちばしにつぶらな瞳。身じろぎもせずにカメラのレンズをにらみ続ける。伊豆シャボテン公園(静岡県伊東市)の“長老”として33年にわたり、鳥類展示施設「バードパラダイス」を見守ってきたハシビロコウの「ビル」(雄・推定年齢43歳以上)だ。
ハシビロコウはアフリカの湿地帯に分布、エサとなる魚が足元に来るまで息をひそめて待ち伏せる。場合によっては数時間、じっと水面を見つめて…。
そんな習性がテレビやインターネットで「動かない鳥」として紹介されて以来、じわじわと人気を集め、国内最高齢の「ビルじいさん」は今や押しも押されもせぬシャボテン公園の顔に。「ビルに会いに来た」という来園者は後を絶たない。
アフリカ生まれのビルは寒さが大の苦手で、冬場の気温が低い時期は来園者向けのイベント「お食事タイム」以外は小屋で過ごすことが多く、時間帯によっては会えない場合もあるという。
取材当日は朝からご機嫌で、担当職員が近づくと、それまで「動かない鳥」だったビルの様子が一変、巨大なくちばしでカタカタと音を立て、首をふりふり…。
これは、「クラッタリング」と呼ばれる行動で、自分の世話をしてくれる人に対し親しみを込めて、あいさつをしているのだとか。そう言われてみると、確かにお辞儀をしているように見える。