撮影にはできるだけ最新、高機能の服装で臨む。それはオシャレをするなどという感覚ではなく、強風や豪雨、低気温といった自然の脅威から自らを守る手段である。
そんなカタログから飛び出してきたような格好をしていると安心できる半面、ひどく自分が情けなく感じることもある。
強風に身を任せ大空を悠々と舞うイヌワシ。横殴りの雨に打たれながら大地を闊歩(かっぽ)するヒグマ。そんな生き物たちの姿を見るにつけ、今この場所で最ももろい生き物は自分だよなあ、と自責にも似た思いにとらわれるのだ。この防水ジャケットがなければ、この防寒着がなければ、果たして自分は何日生きながらえることができるのだろうか-。
己の身ひとつでこの過酷な環境を生き抜く野生動物たち。その順応性には、極地ならではの驚くべき進化が集約されている。
≪体温を氷点下に 究極の省エネ≫
円筒形のボディーと器用に動く前足。愛らしさを演出する体形が、実はこの動物の生存に直結している。
ホッキョクジリスは地中に暮らすリスだ。その体形と鋭い爪を駆使し、全身をドリルと化して地中に巣穴を作る。外敵や風雪から隔離された空間には、雑多な植物や昆虫、小動物などが食料として保管されている。