軸から無数に出た絹毛(きぬげ)は、白い鳥の繊細な羽毛を思わせる。上等のフェザーをもったこの実の主は、クサボタン。本州の山に自生し、日当たりの良い草原や林のふちでよく見かける。
うす紫色の花が散ると、十数個の子房(しぼう)が残る。子房にはめしべが落ちずに残っていて、やがてそこから絹毛が生える。子房が球状に集まっているため、実が熟すころ、全体はふわふわした羽毛のボールのようになる。晩秋の風が羽毛のボールを揺らすと、熟した実は風に乗って母体を離れる。
タンポポ、ガマ、ガガイモ、ヤナギなど、実や種に毛をもつ植物は多い。風を利用して繁殖地を広げる作戦を選んだ植物たちだ。毛は、ありとあらゆるパーツから生み出される。タンポポの綿毛は花のがく片(へん)が、ガガイモやヤナギの毛は種の皮の一部が変化したもの。ガマは子房の下にある柄の部分から毛を生やす。植物学では、発生の由来によって「種髪(しゅはつ)」「冠毛(かんもう)」などと呼び分けている。