九州出身の音楽アーティスト、黒木渚さん(鋤田正義さん撮影)【拡大】
鋤田(すきた)さんの写真は時々絵画みたいだなぁ、と思う。
鋤田さんに出会うまで、私は写真の世界とほとんど接点を持たないまま生きてきた。フォトグラファーという職業も私にとっては遠い存在だったし、カメラと聞いて思い浮かべるのは使い捨てカメラとか家庭用のデジカメだ。写真は私自身の身近な思い出を記録するためのものとして考えていたのだ。それらは「旅行」とか「進学」とか「祝いごと」の記録として撮影され、アルバムに収められる。これまで私が見てきた写真というものは、芸術作品としての写真ではなく、人生の記録としてのものなのだ。
概念変わった
鋤田さんと初めて出会った日、鋤田さんのこれまでをつづった自伝が発売された頃で私も一冊いただいた。フォトグラファーという職業について、鋤田正義という人物について、そしてその2つが密接に入り交じって築かれてきた彼の人生がそこには書かれていた。鋤田さんが過去に手がけた作品もたくさん紹介されていて、私はその一つ一つを鑑賞した。カメラや写真というものは、私が考えているよりもはるかに奥深い世界だった。