九州出身の音楽アーティスト、黒木渚さん(鋤田正義さん撮影)【拡大】
俄然(がぜん)、興味がわいてきた私は、その時期に開催されていた鋤田さんの写真展にもうかがった。引き伸ばされた写真がシンプルな壁に一定の間隔で展示されている。場所も被写体もさまざまな作品の数々。ゆっくりと会場を回りながら、沢山のことを考えた。私自身のバックグラウンドや、感じ方、単純な好みなど、いろんなことと反応しながら鋤田さんの作品が解釈されていく。もしかしたら鋤田さんが意図した内容とは違う方向に私が作品を理解している場合もあるかもしれない。それでも、今まで個人的な記録写真ばかりと接してきた私のような素人の心にも、鋤田さんの写真たちは大きな渦巻きを産み出してしまった。写真の概念は今までとは全く違うものに変わり、そしてそれは紛れもなく芸術なのだということを思い知った。
それぞれの感性で
例えば、そびえ立つ自由の女神とその前に立ってピースサインをしている自分の写真を見て思うことと言えば、「ああ、あの旅行は楽しかった」「こんなことがあった」と、その写真が撮影された場所や時間をきっかけに呼び起こされる思い出ばかりだった。