クリストフェル・ピアーソン「鷹狩道具のある壁龕」1660年代(推定)_油彩・キャンヴァス_ワシントン・ナショナル・ギャラリー_Courtesy_National_Gallery_of_Art,Washington【拡大】
デジタル技術も駆使
クリストフェル・ピアーソン(1631~1714年)の「鷹狩道具のある壁龕(へきがん)」は17世紀に描かれたとみられるが、本当に壁にくりぬかれた壁龕のなかに、鳥かごや弓矢など狩りの道具が入っているように描かれている。
「本物のように描く」という“だまし”の技術は、とくに写真が発明される19世紀まで画家にとっての最大のセールスポイントだった。
ところが、20世紀以降、写真の真実味を逆利用した作品が登場してくる。フィリップ・ハルスマン(1906~79年)の「官能的な死」は、写真の左側にも収まっているシュールレアリスムの画家、サルバドル・ダリ(1904~89年)の素描に基づいて、写真家のフィリップが撮影した。ヌードが組み合わされた形は死の象徴・どくろに見える。
さらに現代の写真家では、杉本博司(1948~)がジオラマ・シリーズで、人形などを配置して、本物より本物らしい風景を撮った作品をつくる。路上にあふれるひび割れやきずあとを、さも作家自身が破壊したあとのように撮影する田中偉一郎(1974~)の「ストリート・デストロイヤー」も展示されている。