昨年9月初めには伊藤元重(もとしげ)・東大教授が言い出して、黒田東彦(はるひこ)・日銀総裁が同調するに至り、安倍首相に消費税増税を決断させる殺し文句になった。財務省御用の学者のみならず、国債問題専門家として評判の高い高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミストや金融業界首脳も同調しているので、この論議の影響力は極めて高い。消費税増税を予定通り、再引き上げしろという、財務官僚や自民党内の増税派を勢いづける。
税収増えねば…
安倍首相は今度も、この論議に屈するだろうか。首相は周辺に「増税しても税収が増えなければ意味がないじゃないか」と漏らしている。筆者はまさにこのポイントを以前から指摘してきたし、その論考は安倍首相の手元に届いているとも、首相周辺から聞いた。
1997年度の消費税増税後、消費税収の増収分よりも法人税、所得税など他の基幹税収の減収額が大きかったために、増える社会保障関係費もまかなえず、財政収支が大きく悪化した事実は重い。