森氏の訪露については、モスクワの日本大使館がロシア外務省に外交ルートを通じて要請した。しかし、外務省が森氏を本気でプーチン氏と会わせたいと考えたならば、日本大使館がクレムリン(露大統領府)に直接働きかけなくてはならない。現在の日本大使館のロビー能力は情けがないほど弱い。原田親仁(ちかひと)大使が外交担当のウシャコフ大統領補佐官に働きかけたくらいでは、森氏との会談要請がプーチン氏の耳に入ることはない。原田大使は最低限でも、プーチン氏の盟友であるセルゲイ・イワノフ大統領府長官に面会して、会談の取り付けに努力すべきであった。現地の大使が大統領府長官といつでも会えるような関係を構築できていないようでは、大使館は「税金泥棒」と非難されても仕方ない。
モスクワの日本大使館の実力を熟知している森氏は、日本外務省のみに頼らずいくつかの信頼できるルートも活用した。例えば、アファナシエフ露駐日大使は、露外務省に対してのみでなく、クレムリンにも直接、公電(公務で用いる電報)を打つ権限を有している。森氏はアファナシエフ大使と接触して、会談要請を行った。