クレムリンには、日本との関係を発展させたいと考えるグループと、米国の同盟国である日本が対露独自外交を行う可能性はないので日本との関係は冷却させた方がよいと考えるグループが暗闘を展開している。こういうときに駐日大使の意見具申がクレムリンに影響を与える。クレムリンのゲームのルールを熟知する森氏だからこそこのような働きかけができたのである。
今回の会談において、プーチン氏は森氏に対し、訪日の意向を有していることを再度確認した。首脳レベルでの政治対話を継続する意志をプーチン氏が有していることを確認できたのは大きな成果だ。
どうもプーチン氏には、ロシア外務省が事務レベル協議を中止したために、訪日準備が停滞しているという事実関係に関する正確な情報が入っていないようだ。露外務省、クレムリンの双方に、情報をブロックする動きがあるようだ。このような動きは、モスクワの日本大使館の能力が基準に達していれば封じ込めることができるはずだ。しかし、原田大使の下でそれを期待するのは無理だ。日露間の重要な事柄については森氏がシャトル外交を行う以外、現実的な方策が見あたらない。北方領土交渉においても森氏はキーパーソンだ。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)