こうした点を踏まえると、韓国検察と政府の対応は稚拙極まりなく、狂気とさえいえる。先述したように、古今東西、政治と経済を問わず、権力者がメディアの自由な活動を許さない、もしくは何らかの形でそれに干渉し、抑えようとすることは珍しくない。同時に、メディア側にも覚悟が求められる。政治学者の丸山眞男氏は「言論と批判の自由は、有効批判でありえてこそ、いいかえれば、それが指導者の政策を改めさせ、あるいはそれが不可能な場合には、指導者を交代させる力をもたねばならぬ」(『講義録3』東京大学出版会)と記している。
私たち市民は、メディアが安全で公正な社会構築のために活動し、その力をできるよう、能動的な意思で応援すべきだということでもある。(同志社大学社会学部教授 渡辺武達(わたなべ・たけさと)/SANKEI EXPRESS)